取手市/白山小学校

白山小

話し合い、工夫し、取り組んだ
自分たちならではの『利根川の詩』

利根川の近くに位置する取手市立白山小学校には、10年ほど前から受けつがれている合唱組曲『利根川の詩~川とつながるわたしたち~』がある。毎年5年生が取り組み、全校児童に発表してきた。コロナ禍(か)で思うように練習や発表ができない中、昨年も子どもたちは一人ひとり考えながら練習を重ね、オリジナリティあふれる自分たちならではの『利根川の詩』を完成させた。

利根川にまつわる体験が歌詞に
 『利根川の詩』は、2012(平成24)年に取手市で開催(かいさい)された「全国川サミット」で、当時の4~6年生が発表したもの。利根川に鮭(さけ)の稚魚(ちぎょ)を放流したり、河川敷でマラソン大会やたこあげ大会を行ったりするなど、利根川が身近にある同小の子どもたちが、利根川をテーマに書いた詩から言葉を集めて歌詞を作り、メロディーを付けてできた組曲だ。3部構成で20分弱にもなる大作で、合奏やダンスなども組みこまれた見応え十分のオペレッタ作品となっている。

工夫をしながら取り組み独創性あふれる作品に
 昨年度、取り組んだのは68人の5年生。夏休み明け、音楽の時間に先生の指導の下、練習を開始した。子どもたちは1人で2役の台詞と楽器やダンスなどのパフォーマンスを担当。子どもたち自身で役割を決め、パートごとに練習を重ねた。
 ピアノ伴奏(ばんそう)を担当した3人は曲が途切れないよう、次にひく子がとなりに待機してなめらかにつながるよう工夫し、「できるところだけ」と伝えたにもかかわらず、3人で全部を仕上げた。和太鼓(わだいこ)は当初は1人の予定だったが3人で練習を重ね、数小節ずつ入れかわりながら見事に表現した。また1人1台ずつ配付されているタブレット端末(たんまつ)を活用し、自分のパートの音源を入れて一人ひとりが自主的に練習を進めた。
 そして昨年12月22日(水)の発表のおよそ1か月前、ステージ練習に移行したところで、5年生担任の2人の先生にバトンタッチ。演出家として子どもたちに寄りそったり、メンバーの1人として参加したりと子どもたちを支えた。練習の様子をビデオでとり、みんなで話し合って、声の出し方や動きを修正したり、独自の演出を加えたり、どんどんオリジナリティあふれる作品に仕上がっていった。「最後の1週間でぐっとのびる。発表当日が最高の舞台(ぶたい)になるようにしてあげたい」と先生の指導にも力が入った。

最高の作品を堂々発表自信が成長につながる
 発表当日、「見る人を感動させたい」という思いで舞台に立った5年生たちは、4年生と6年生を前に堂々と歌い、演奏し、演じきった。「みんなで協力して作り上げ発表した経験、人に感動を与えた経験は、大きな自信になった。高学年としての活動も思うようにできない中、学校の中での重要な役割を引きつぐことができ、成長につながった」と2人の先生は子どもたちを称(たた)えた。
 子どもたちの体験から作られた『利根川の詩』だが、コロナ禍になり、歌詞の中で歌われている行事の多くが中止や縮小になっている。これからこの歌を受けついでいく子どもたちは、体験として知らずに歌うことになるのかもしれない。しかし体験できないからこそ、歌の中だけでも残していくことが大切なのではないか。さまざまな思いを抱えながらも、同小の伝統として今後も引きつがれていくことだろう。