取手市/教育委員会
子どもたちを心の危機から守る 安全安心な学校にするために
8月9日(水)、取手市立市民会館(同市東)で市内の小中学校の教職員、PTA役員、青少年相談員などを対象に、生徒指導や教育相談の専門家である関西外国語大学の教授による児童生徒の自殺防止についての講演会が開催(かいさい)された。豊富な資料やデータをもとに理論的な解説から具体的な事例まで盛りこみ、学校の対応の仕方を示すなど実践(じっせん)的な内容の講義に、参加者たちは熱心に耳をかたむけた。
違和感を大切にし 未然に予防する
演題は「『新生徒指導提要』が示すこれからの自殺予防の方向性」。小・中・高校生の自殺は近年増加傾向(けいこう)にあり、国際的にも日本の自殺率は高く、深刻な状態にあるという。そこで多様な不安や悩みを抱える児童生徒を理解するために、危機にある児童生徒やリスクの高い児童生徒への支援(しえん)など、組織として体制を整えていく必要があるとの考えから、今回の講演会を企画(きかく)。教授は、昨年改訂された『生徒指導提要』について解説しながら、具体的な対応について講義した。
最初に自殺予防の3段階として「未然防止・予防教育」「危機介入(かいにゅう)」「事後対応」について解説。第一段階として自殺予防教育の大切さをうったえた。自殺予防教育の目標は「心の危機に気付く力」と「相談する力」を身につけること。教職員が危機が高まった児童生徒に早期に気付きかかわる課題早期発見対応と、専門家と連携(れんけい)して危機介入を行うことで未然に防ぐことができる。教職員一人ひとりが子どもたちのサインに気付き、受け止める力を向上させることが課題とし、「違和感があったら『多分、大丈夫』と思うのではなく、『何かある』と考えて対応してほしい」と強調した。
子どもたちが安心して 過ごせる学校に
子どもたちは過度なストレスや孤立(こりつ)感、自己否定、自傷行為(こうい)などが重なり「自分なんかいない方がいい」という衝動(しょうどう)にかられやすいという。そこから行動化を防ぐためには、安心できる居場所や何でも言える雰囲気を作り、自己有用感を高めたり、共感的人間関係を育んだりする取り組みを行うなどの学校づくりが重要。そして自殺の危機の高まった児童生徒への対応として、具体的な声かけの例を示しながら「よい聴(き)き手」になるようにと語った。
学校と相談機関が協力 子どもを守る体制を
最後に実際に起こってしまった事例をあげ、学校や教師はどう対応すべきだったかについて考えた。大事なことは1人で抱えこまず多くの人と共有すること。チームで支え合う支援の体制を整えることの重要性について述べた。そして子どもたちが安心して相談できる体制を学校だけでなく相談機関などとも協力して整え、「子どもたちが自分らしく生きる力を身につけ、社会に出ていけるようにしていきましょう」と講演をしめくくった。
講演をふり返り、「教師にとって必要な『児童生徒の異変に気付く力の大切さ』など、たくさんの学びが得られた内容だった」と教育総合支援センターの指導主事。参加した教職員からは「子どもたちの小さなサインも見逃さないようにしたい」「気になることはみんなで共有したい」「子どもたちとのかかわり方をふり返るきっかけになった」などの感想が多く聞かれた。また「組織として子どもを守る体制ができているかどうか再点検したい」などの声もあり、子どもたちのために何ができるかを考える有意義な研修会となった。