牛久市/教育委員会
牛久シャトーを教材に学ぶ 地域を活性化するための取り組み
日本初の本格的ワイン醸造場(じょうぞうじょう)として「重要文化財」「日本遺産」「近代化産業遺産」に認定されている牛久シャトーがある牛久市では、この貴重な文化財を学習の教材として活用している。日本ワイン造りの歴史を学び、牛久シャトーの魅力(みりょく)を知り、さらに多くの人に知ってもらうためにはどうすればよいかを提案。子どもたちは地域の一員として、地域を活性化するための実践(じっせん)的な学びを行っている。
多くの小中学生が見学 本物にふれて学ぶ
牛久シャトーは120年前に、神谷傳兵衛によって造られた日本初の本格的ワイン醸造場。当時のままの赤レンガ造りの建物や樽(たる)の貯蔵庫(ちょぞうこ)などが残り、館内には資料館もあって日本ワイン造りの歴史を学べる施設(しせつ)になっている。牛久市内の小・中・義務教育学校では、この貴重な文化財を学習に生かし、牛久シャトーについて調べたり、調べたことをまとめて発信したりしている。昨年度は授業で、10件、のべ1042人が牛久シャトーを見学に訪れた。
案内をしてくれる文化芸術課では、子どもたちに楽しく学んでもらおうと、牛久シャトーやワイン造りの歴史について知ることができるワークシートを作成。同課の担当者は「樽を見て大きさにおどろいたり、建物や貯蔵庫内のにおいや温度を感じたりすることで、強く印象に残り、多くを学ぶことができる」と本物にふれることの意義を話す。今後は子どもたちが学習の成果をまとめた新聞を展示するなど、牛久シャトーを教育の場としてより活用できるようにしていく考えだ。
地元の小中学生が 集客のアイデアを提案
とくに力を入れて学んでいるのが、牛久シャトーが学区内にある神谷小や牛久一中だ。 神谷小の4年生は集客のアイデアを考えた。ブドウにちなんだ遊具を置くことや、ワインやブドウを景品としたくじ引きなどを提案し、出前授業で同課の職員がアドバイスをして検討することも約束。このとき提案されたスタンプラリーは採用され、実施(じっし)されることになった。さらに同小の子どもたちは、もう一つの国産ワイン発祥(はっしょう)の地とされている山梨県甲州市の小学生ともZoomを使って交流し、地元のワイン造りについて発表し合った。
また牛久一中では、3年生が「牛久シャトー観光客増加プロジェクト」に取り組み、牛久シャトー株式会社や市役所の各課職員を前に自分たちの企画のプレゼンテーションを行った。若者に人気のスイーツの開発やブドウ狩り体験などの提案のほか、SNSを使った情報発信などいくつものアイデアを発表。担当者から助言や質問があり、今後の方向性を考えるきっかけになった。
地域に目を向け 地域課題を考える
「地域の課題を知り、課題解決のためのアイデアを練り、よい提案は採用され社会に生かされる。市が取り組んでいるこのような学びからは、達成感や自己有用感が得られ、学ぶ意欲につながり、地域に目を向けて地域愛を育むきっかけにもなる」と指導課の指導主事。
夏休み期間中には、先生たちを対象に地域巡回(じゅんかい)研修も実施。初任者を中心に27人が参加し、牛久シャトーのほか、雲魚亭や住井すゑ文学館、クリーンセンターなどをバスでまわって見学した。地域の自然やさまざまな文化財を生かし、地域と連携(れんけい)し、地域課題をともに考える学びが行われている。